さっそくなんですが、気になっていた質問です!「アイドル」ってなんですか?また、アイドル野菜出荷組合について教えてください。
万惣さんの店舗は今はアルゾという名前ですが、以前は「アイドルショップ万惣」という名前でしたよね。万惣と直接契約を結ぶ農業組合として発足するときに、万惣の前山本会長がそのお店の名前からつけてくださったんです。もともとこの組合の発起人は山本会長とアイドル野菜出荷組合の初代組合長である平野さんです。43年前、山本会長は農家さんと直接取引をしたいという熱意から、自ら脚を運んで農家さんを回っておられました。直接やりとりをすることによって青果の新鮮さ、安定した供給を実現するためです。その時期の不作豊作にかかわらず決まった価格での取引であり、専属農家が作った野菜は全て万惣さんに卸すため、安定した供給を実現できるんです。市場に卸す価格のほうが高いときもありますが、平野さんは絶対にそうしなかった。もちろん逆に市場価格のほうが安いときもありますし、何より平野さんは万惣さんとの信頼関係を大事にしていたからです。山本会長と平野さんが積み上げてきた信頼によって43年間続いてきた関係なんです。

私たちが生まれる前からある絆なんですね…組合としてはどのように活動されているんですか?
現在組合に加盟している農家は9名で、アイドル野菜出荷組合では農業の技術的な情報を共有しています。それぞれが万惣さんに野菜を卸す中で品質に差があってはいけないので、例えば農業を始めたばかりの人も同じクオリティのものが作れるほどに徹底した情報共有をしています。かく言う私も、農業を始めた13年前はこの仕組みにお世話になりました。1月に作り始めて、3月には出荷することができていましたね。通常、農家は品質が卸価格に直結し、他の農家はいわばライバルです。そのため情報の共有はあまりされないことが多いのですが、組合の中ではその閉鎖的な習慣をなくしています。品質を一定に保ち、消費者の方に手に取りやすい価格でお届けするためです。

組合長 隅田さん

先ほど見学させていただいたほうれん草の畑は昨日雹の被害に遭ったと仰っていましたが…。
そうなんです。傷んでしまっているので、今日見ていただいたのは45坪ほどの畑ですが、全て廃棄にせざるを得ないですね。全て機械で潰して乾燥させてから土に戻します。高い品質のものを消費者の方々にお届けするため、私たちは少しでも傷んでいるような野菜は出荷しません。こんなふうに、気象には常々悩まされてきました。私たちは農業のプロですが、毎年が異常気象と呼ばれるような昨今では、常に1年生です。台風や大雨によってそのときの畑の売り上げは0になってしまいます。夏は朝5時から21時まで、冬は朝5時半から19時まで、4時半に起床して365日毎日畑の世話をします。一日も欠かせないので病気で寝込むことも許されません。組合内での情報共有をここでも活かして、できる限りの対策をしています。それでも自然には勝てません。
全て廃棄ですか…。
もったいないと思ってしまいますが、このほうれん草に限らず、高い品質を保つため基準をクリアしないものは弾いています。
万惣としては、今後この「もったいない」を見落とさないよう改善していければと思っています。お客様にとっても品質上問題ないものをお買い得にお求めいただけますので。

アイドル野菜を出荷するにあたって、今後の課題はありますか?
やっぱり、今後も長く野菜を提供するために農業の後継者を増やしていくことですね。実はうちは二代目の組合員もいるので、27歳から73歳まで、幅広い年代の人員で構成されています。これは情報を共有し合ううちの組合だからこそできることですが、栽培のノウハウを次の世代に伝えていきやすい。しかし、資材高騰の今、新規参入というのはすごくハードルが高くなっているんです。農業に必要な機械やビニールハウスを確保するにも、畑のための土地を確保するにも初期投資はかなりのものです。
その問題を解決していくことが、組合さんだけでなく、野菜を卸していただいている万惣にとっても課題ですね。

組合員 森岡さん

他の農家さんでは通常、種を蒔くときに12~15㎝程の間隔を空けて蒔きます。うちはそこを27~30㎝にまで広げている。これは育てる途中の段階で種同士の間に機械を通してすきこみ、土を柔らかくして根の張りをよくするためです。また、酸素も行きわたりやすくなります。野菜の収穫量は半分になってしまいますが、この方法のほうがおいしい野菜が育つんです。むやみに量産することよりも品質に重きを置くうちの組合ならではのやり方です。
また、常に旬の野菜を販売していることもこだわりです。季節によって育てる野菜を変えながら、年間を通して小松菜やトマト、小かぶや春菊など12種類ほどの野菜を県内にある計40ヘクタールほどの広大な畑で育てています。今だったらメインはほうれん草ですね。万惣さんの契約では、旬でない野菜は基本的に卸さないことになっているので、いつ店頭を覗いてもMANSO−BESTのコーナーには旬の野菜が並んでいるんです。
また、万惣さんと直接やりとりするので、収穫から店頭に並ぶまでのスピードも自慢です。間に卸業者を通すともう少し時間がかかってしまいます。旬の野菜を新鮮にお届けできることは、万惣さんと私たちアイドル野菜出荷組合の専属契約の強みです。

ほうれん草がたくさん育っている畑で、組合長さんに直接おすすめの食べ方を教えていただきました!
ほうれん草って、実は根が一番おいしいんです。ほうれん草は通常根まで引っこ抜かずに刈り取るので、店頭に並ぶときは切り落とされてしまっているんですが…。茎の根本から根までの5cm程、ここが一番。ここを湯がくと子どもが取りあいを始めます(笑)。シンプルですがほうれん草のうまさが最も濃く感じられるんです。
43年にも渡って続く万惣とアイドル野菜出荷組合の信頼関係。野菜へのこだわりはその味に確かに表れていました。お客様にも良さが伝わるよう、私もより一層店頭での販売に力を入れていきたいです!